絵 : 後藤仁
文 : 宝迫典子
出版社 : BL出版
発売日 : 2024年7月10日
サイズ : 30×22㎝ 32ページ
価格 : 本体1800円+税
ISBN-10 : 4776411385
ISBN-13 : 978-4776411383
~ミャオ族が語り継いできた『花辺姐姐』という故事がベースになっています~
文字をもたなかったミャオ族は、古来より歌や舞い、そして手芸作品で民族の神話や歴史を伝承しながら、各地域で独自の文化を花咲かせました。糸を紡ぎ、布を織って、刺繍をする、膨大な時間と労力をかける女性の手仕事は、販売目的ではなく、あくまでも自分や家族のためにありました。刺繍は、熟練した技巧と非凡な記憶力によって、母から娘へと受け継がれ、さらに、同世代で切磋琢磨してゆくものだったのです。
王さまに無理難題をかせられたむすめ。むすめが涙を流しながらほどこした美しい刺繍には、なんと命が宿り…。
日本画家の後藤仁先生がミャオ族の村を写生旅行し、長い歳月を費やして完成させた絵本原画は、日本画伝統技法に加え、独自の技術による繊細な筆致と複雑な彩色で描き上げられました。
文字をもたなかったミャオ族(苗族)は古来より歌や舞い、そして手芸作品で民族の神話や歴史を伝承してきました。
刺繍のモチーフに最も用いられているのが蝶です。これは民族の古歌『妹榜妹留』や『十二個蛋』に由来します。ミャオ族創世物語によると、蝶に化身した“蝴蝶媽媽”(苗語:妹榜妹留)が水泡と恋愛して12の卵を産みます。それらが孵化して雷公、龍、蛇、虎、羊、象、猪…、最後に生まれてきたのが人、すなわちミャオ族の始祖姜央です。魚と鳥の組合せは夫婦の恩愛を暗示する図案です。たくさんの卵を産む魚は子孫繁栄の願いが込められています。錦鶏、鵲、雀、燕、孔雀、鷺など、鳥の模様には祖先に対する崇拝の念が込められています。龍は幸福をもたらす瑞獣です。漢族にとって龍は至高無上、皇権の象徴ですが、ミャオ族にとって龍は敬愛の対象であって、決して恐れるものではありません龍図には福徳円満、厄除開運の願いが込められています。
ミャオ族が古代黄河流域の中原で暮らしていた歴史を物語るデザインの一つに女王蘭娟が考案した蘭娟衣があります。伝説によると、黄河を越えたことを左袖に黄色いライン、長江を越えたことを右袖に青いライン、胸元には洞庭湖…、旅の道のりを刺繍して、一族安住地を定めた時には蘭娟の服は刺繍デザインで埋っていました。それら思いついたデザインで娘のために作り上げた盛装はたいそう美しく、蘭娟衣と名付けられて広まりました。
現在、女性が日常で着用する衣服の種類や色彩により「黒苗」「白苗」「青苗」「紅苗」「花苗(刺繍が多いという意味)」「短裙苗(ミニスカート)」「長裙苗(ロングスカート)」などと呼ばれ、各地域で独自の文化を花咲かせています。