台湾の高山茶園の中で最も有名な山が梨山、農場の小高い場所には『天池』という池があり、その池のほとりにはかつて台湾を統治していた蒋介石がしばしば憂国憂民したと言われる『達観亭』と名づけられた亭が建っています。天池は海抜2600m、梨山茶の生産者と言われるのは海抜2000m以上の約50の茶園だけでした(2005年時)。2400m以上の高山茶園では、年に2回しか収穫はできません。最初の茶摘期は5月末から6月初旬、この時低地茶園の春茶摘みはとうに終了し夏茶の収穫が始まっています。第二の茶摘期は8月末から9月初旬、低地では秋茶と冬茶期の間にあたります。この大変に少ない収穫の良し悪しもすべて天候に左右されます。梨山地区の霜期は大変長く、もし4月に晩霜が降りたら新芽は凍傷にかかってしまい、第一季の茶摘みは水の泡となってしまいます。同様に秋に早霜が降りてしまったら、第二季も難しいことになってきます。このように梨山茶作りは綱渡りのようにリスクをともなう商売です。生産量が少ないうえに製茶時期が低地と異なるために品評会に出すことができないという事情があるため、高山茶の相場はその年の良し悪しや製茶技術に関係なく、高山茶園の名声だけで決まるのです。
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