糸魚川のバタバタ茶とカワラケツメイ

新潟県糸魚川市に伝わるバタバタ茶、その起源は諸説ありますが、江戸時代北前船によってもたらされたという説が有力です。
上杉謙信が武田信玄に塩を送った逸話のある越後の姫川両岸にひろがる城下町の人々は、バタバタ茶の由来について、松江の不昧公(出雲松江藩第7代藩主/1751~1818)の茶道の門人だった松平日向守直紹が糸魚川城主になったおりに城下に広めたと伝え聞かされてきました。バタバタ茶の茶碗は昔から出雲の布志名焼に限られるというこだわり、少量のお茶を泡立てて何杯も飲むと胃に入るたくさんの空気でお腹をいっぱいにする妙法、飢饉など苦しい際にも雅趣を求める心の豊かさ、不昧公の風流趣味の普及と食糧対策二つが功を奏しました。
糸魚川のバタバタ茶の特徴はカワラケツメイ(河原決明)が入っていることです。カワラケツメイの茶はまめ茶、ハマ茶、キシマメ茶、ざら茶、ネム茶、弘法茶・・・さまざまな名前で呼ばれ、現在でも中国四国地方で愛飲されています。
糸魚川のバタバタ茶体験へは一人行ったのですが、相馬御風宅でこの地の茶文化を絶やすまいと茶会を開催してきたバタバタ茶の会の皆さんがとても歓待してくれて、これもどうぞ、あれもどうぞとご馳走して下さり、最後に実際使われていた古くて貴重な茶碗をお見せしましょうと茶碗が出て来て、それではとカメラをかまえると、キレイに撮れるようにと光のあたる板間に茶碗を移してくれましたっけ。そこが、ついに高齢化で存続することができなくなってしまい最後の茶会を行ったという記事を読んだ時に思い出したのが、囲炉裏に飾られていた小さな黄色い花をつけたカワラケツメイのこと。
無性にカワラケツメイが見たくなって、花が見られそうな植物園を探した結果、旅先で倉敷の重井薬用植物園を訪れることにしました。こちらのホームページの植物園便りで絶滅危惧種になってしまったツマグロキチョウが生息していることを知ったのもこちらを選んだ理由のひとつでした。ツマグロキチョウの食草がカワラケツメイなのです。自然の草地が少なくなり、カワラケツメイもツマグロキチョウも普通に見ることができなくなってしまいました。
果たして、花が咲くのはまだ先でしたが、蝶たちはたくさん飛んでいました。秋にはカワラケツメイでお茶を作るイベントも開催されるとか。

2023年7月30日Facebook記事より

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